ミンブ地区の鉄道路線(Minbu)

※本ページで紹介しているエリアは観光客がめったに訪れない都市が多く、英語はほとんど通じません。
コミュニケーション手段を準備しない興味本位での訪問は一切お勧めしません。

1.概要

2000年代に入ってMRは全国13線区の鉄道新線建設計画を策定し、2014年頃まで各地で延伸工事が実施された。
本ページで紹介するパコック以南・チャンギン以北のエーヤワディー川西岸の諸都市もKyangin - Pakkoku Railroad Projectにより鉄道で結ばれることとなった。
またミンブはエーヤワディー川東岸の既存線(厳密には南側のマルンジャンクションで分岐)と、ラカイン州方面の新線、そしてチャンギン・パコック線の交差点となる一大拠点となるはずであった。
2010年代中盤に新線建設は完全に停止し、本エリアの鉄道路線は中途半端な敷設状況である状態が続いている。
またMR公式サイト等を見ても、本エリアの各区間がどの支社に含まれているのかは不明確である*。
本サイトではこれらのエーヤワディー川西岸に計画・建設された各線区を「ミンブ地区」として便宜上総称する。

Kyangin - Pakkoku Railroad Projectの最南端であるチャンギンは1970年代より西方のPetye方面にあるセメント工場への専用線が整備されている。
チャンギンから延伸された新線はこの専用線と並走しつつ一旦西側に向かって走る。Petye市街から幹線道路と並走し、エーヤワディー地方域を抜けてバゴー管区に入る。
路線は時々エーヤワディー川を右手に見つつ、荒野を進んでいく。
幾度か幹線道路と交差した後に到着するのがオーシッピン(Okethitpin)の町である。
またオーシッピンにはPC枕木工場も設置されている。
新線の中継点となるのがパヤーボー(Payarpaw)で、並走した幹線道路はここで進路を対岸の街ピィへ移す。鉄道駅があるのは周辺に集落のない場所である。
ここまでは、ヒンタダからのRBE列車が2010年代後半まで運行されていた。
パヤーボーからさらに北上した新線はマグウェ管区に入り、沿岸の街カンマ(Kamma)へ至る。
ここからは比較的川沿いを走行し、この地域の拠点となるタエッミョー(タエッ, Thayet)に到着する。
タエッミョーは対岸の都市アウンランと渡し船で結ばれており、歴史的にも第二次英緬戦争から全国的な植民地化まではこれらの都市が英国の最前線であるなど興味深い町である。
タエッミョー以北も山を隔てた川沿いを走り、幹線道路と並走していないからか、一日一往復であるにも関わらず乗降が多い。
マルン(Malun)にてついに鉄道線は東岸の地域(バガン支社)との接続が取られる。タウンドウィンジーとマルン、ミンラ(Minhla)を結ぶRBE列車はミンブ地区の燃料の輸送も兼ねている。
続いて新線はミンラに到達する。ここには城塞(Minhla Fort)が残されているなど西岸の地域でも比較的大きな町である。タウンドウィンジーへの列車はここが始発である。
再び幹線道路と並走しながら荒野を進んだ列車は終点のミンブ(Minbu)に到着する。ミンブはマグウェの対岸に位置しており、人々の往来も多い。
ミンブから先はPwintpyuまでの区間が開通し、一時期列車も運行されていた。そこから先の区間は橋梁の建設が難航・放置されており、鉄道はセヒュー - パコックの区間まで到達していない。

ミンブからは西方ラカイン州のアン・シットウェー道路に並走する形での鉄道線も建設が計画された(Minbu - An - Sittwe Railway Project)が、山越えとなるためか建設は進んでいない。

コロナ禍の影響により2020年4月以降当エリアの列車は全て運休となり、その後の運行再開は2023年2月現在確認されていない。

本地域の拠点となるのがタエッ車両区である。
ここにはRBEが複数両配置されており、南側のヒンタダ支社と適宜車両の交換・整備がなされている模様。
ヒンタダ支社とタエッ区の車両はマルンジャンクション経由で工場へ回送される。

Kyangin - Pakkoku Railroad Projectでは以下の区間にて列車が運行された:
・Pakkoku - Seikpyu(2020年まで運行)
・(Seikpyu - Pwintpyuは未開業)
・Pwintpyu - Minbu(運休)
・Minbu - Thayet(2020年まで運行)
・Thayet - Payapaw(運休、但し回送列車等は走行可能)
・Payapaw - Kyangin - Hinthada(Payapaw - Kyangin間は運休、但し回送列車などは走行可能)

*パコック - セヒューは現状明らかにパコック支社の管轄であるが、路線建設の経緯から上図に含めている。

2.開通時期
2008/3/1 Okshippin − Kyangin
2009/3/22 Kamma - Okshippin
2009/10/17 Thayet - Kamma
2009/11/20 Pakokku - Kyun Chaung
2010/3/14 Minhla - Thayet
2010/6/12 Yawchaung (Daungtha) - Seikpyu
2010/9/19 Minbu - Minhla
2010/10/9 Seikpyu − Hsinbyukyun
2011/1/22 Pwintbyu - Minbu
2011/2/26 Kyun Chaung - Daungtha

2013/5/ 11 Ayeyawaddy Bridge (Malun)


建設中:Hsinbyukyun - Pwintbyu

3.列車 ※2020年4月以降全列車運休中
・運行中(2020年3月現在)
Minbu1 Thayet - Minhla - Minbu RBE列車
Minbu2 Minbu - Minhla Thayet RBE列車
193UP Taungdwingyi - Minhla  RBE列車、車両はTaungdwingyi所属
194DN Minhla - Taungdwingyi  RBE列車、車両はTaungdwingyi所属

・現在は運行されていない列車
列車番号不明 Pwintbyu - Minbu  (~2012/6/20) RBE列車?
列車番号不明 Minbu - Pwintbyu (~2012/6/20) RBE列車?
199UP  Payapaw - Thayet (~2016/6/10) RBE列車
200DN Thayet - Payapaw (~2016/6/10) RBE列車
183UP Hinthada - Kyangin - Okeshitpin - Payapaw (~2016/6/10) RBE列車
184DN Payapaw - Okeshitpin - Kyangin - Hinthada (~2016/6/10) RBE列車

4.施設・沿線風景

チャンギン駅北側の踏切。右側の架線柱のある線路がチャンギンセメント工場線、左がチャンギン―パコック線。両者はチャンギン駅の先で交差し、しばらく並走したのちにそれぞれの方面へ離れていく。
国道から見たパヤーボー駅舎。

タエッ駅舎。

ホームの様子。 

パヤーボー方面は定期列車の運行が休止中のため、次駅名が隠されている。 

新線でよく見られるタイプの有人駅舎。 

 

無人駅舎の一例。簡易的な待合所が停車場の目印となる。

更に簡易な停留所には、駅名標が立つだけでホームすらないものもある。
国道から離れている区間では、このような停留所でも乗降が見られる。

Minbu1から見るエーヤワディー川対岸に昇る朝日。 

無人駅での乗降の一例。
荒野を進んでいく。
マルンジャンクション駅。
マルン駅側線では小さな朝市が見られる。
ミンラ駅に到着。ここで大半の乗客が下車する。
ホームには料理店が営業しており、乗務員はここで朝食をとる。
ミンブ駅のPwintbyu側。この先への定期列車は休止状態が続いている。パコック方面の未成線の他に、PC枕木工場とAn, シットウェー方面への未成線が分岐している。
ミンブ駅。このエリアの拠点駅となる予定だったためか二階建ての大きな駅舎である。現状タクシーの姿もまばらで、列車の到着後はすぐに周囲は閑散となる。


 

<参考資料>
・ミャンマー国鉄公式サイト(路線開業日一覧)
・Myanmar Alin
・New Light of Myanmar 
・[Stubbs 2018]


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