第4支社:カロー(Kalaw)

 

1.概要
※ヤンゴンーマンダレー線は別ページにまとめます。

 
Division4は、主にシャン州シュエニャウン方面の路線を管轄する支社である。
文献によっては、マンダレー〜ピンウールィン〜ラーショーを「北シャン線」、本ページが対象とする地域を「南シャン線」と分類している。
シュエニャウン方面への鉄道の玄関口となるのはターズィThaziで、同駅には機関区も併設されている。
シュエニャウン方面への鉄道路線建設が開始されたのは1912年、それから約16年後に鉄道はシュエニャウンに達した。
ターズィを出発した列車は、しばらく平野部を走行した後、複数のスイッチバックを有する峠越えの区間に到達する。
スイッチバック区間を超えると、高原地帯を列車は進んでいく。
カロー、アウンバン、ヘーホーはトレッキングを楽しむことができる町としても知られている。
また、空路でこの地域を訪れる際には、ヘーホーが玄関口となっており、多数の航空便がこの町を経由する。
シュエニャウンはインレー湖のあるニャウンシュエ方面と、シャン州の州都であるタウンヂーへの交通の要衝だ。

 1990年代以降、シャン州においても路線延伸が実施されてきた。
1991
年にはシュエニャウンの北方の町ヤッサウYatsawkへ、1993年にはアウンバンからカヤー州の州都ロイコーLoikowへの鉄道線が開通し、ターズィ方面から列車が直通して運行されるようになった。
続いて鉄道線が建設されたのはタウンヂーから東方の町ナムサンとモネ(モンナーイー)へと向かう区間で、地形の面から比較的建設が容易な両端側からの建設が進められた。
1997
年には、シュエニャウンとタウンヂーが鉄道でも結ばれるようになった。
タウンヂーからモネの鉄道は、山間部での大工事を経て2006年に全通した。
ネピドー遷都後には、同都市を中心とする運行体系への再編が模索され、2008年にはターズィより南側のヤンゴン―マンダレー線の駅ピョーブエPyawbweから、シュエニャウン方面へ抜ける短絡線が建設された。
2015
年頃まで、ピンマナからロイコーへ直通する列車が同区間を走行していた。

 2000年代中旬に策定された全国13路線の建設プロジェクトでは、モネからさらに東の都市チャイントンKyaintongKentang)への延伸が計画された。
2010
年にチャイントンから市内南部のWankaungまでの区間が完成し、3両のRBEが配置されたが、以降の建設は進んでおらず、車両も部品が取られた状態で放置されてしまっている。
路線が充実した南シャン州の鉄道であったが、残念ながら2010年代後半より運行区間・列車の減少が顕著となっている。

 2019年時点では、ヤンゴンからターズィを経由し、シュエニャウンへ向かう列車が一往復、ターズィ〜シュエニャウン間の列車が一往復運行されていた。
シュエニャウン〜ヤッサウはターズィ方面と接続する形で一往復が運行される。
2019
5月ごろより、アウンバン〜ロイコーの運休が確認されている。
同区間は、末期は隔日の運行となっていた。シュエニャウン〜タウンヂー間の連絡線は、近年は使用が確認されていない。
タウンヂーからの列車も運行区間の縮小が進み、現在はSaikaungまでの区間列車が一日一往復運行されている。
かつては、ナムサンまでの長距離列車が一往復と、Thiyiまでの区間列車一往復の運行体系であった。
ナムサンーモネも2016年時点で運休となっている。

 ターズィからは、メイッティーラー(メクティーラMeiktila)を通り北西方向のミンジャンMyingyanまでの支線もあり、こちらも一日一往復が運行された。
ネピドー遷都時にはピンマナ方面から直通する急行列車も運行されていた。
これに合わせて、ターズィ側の分岐位置が変更となった(かつては市内を南回り、現在はスイッチバックの必要がない北回り)。
なお、現在もヤンゴン―シュエニャウン直通の9UP/10DNの内、一部の客車がターズィよりミンジャン方面の列車に増結/解結される運用が取られている。

 ヤンゴン―マンダレー線の列車の内、ターズィを起点とする区間列車も複数運行されていた。
混合列車としてミョハン(Myohaung, マンダレー市内南部の駅)〜ターズィに一往復、ターズィ〜タウングーに一往復が運行されたほか、RBE列車(以前はカーヤター)がターズィ〜ピョーブエ間に一往復運行されていた。

 コロナ禍と政変は本エリアでも運行停止措置といった逆風をもたらしたが、2021年以降新たな動きも見られる。
ミンヂャン郊外にある製鉄所と、タウンヂー郊外の製鉄所を結ぶ電気鉄道の建設プロジェクトが少しずつ進められている。
特に2022年現在はタウンヂー側のシュエニャウンへの連絡線の再整備が実施されている。
地方路線での運行再開が確認されていない中でタウンヂー以南の列車が毎日運行されている背景には、この工業鉄道新線建設も関係しているものと考えられる。


 当支社の主要機関区はターズィTZIで、上記列車は同区の機関車・気動車で運行される。
アルストム製DF2000(一部DF1600の機関換装車)と大連製DF2000の内初期導入車がまとまった数配置されている。
この他に、平地の区間・支線列車向けに1200馬力級機関車も複数配置されている。
TZI
の敷地内には、かつての山岳部用ガーラット式蒸気機関車などが静態保存されている模様。

タウンヂー発着の列車を牽引する機関車の整備回送は、分解した上トラックでの陸送となる。

2.開通時期
1893/5/10 Thazi - Meiktila
1912/6/15 Thazi - Kywedetsan
1914/8/20 Kywedetsan - Yinmabin
1914/12/15 Yinmabin - Kalaw
1915/12/15 Kalaw - Aungban
1920/3/10 Aungban - Heho
1928/5/2 Heho - Shwenyaung
1991/3/27 Shwenyaung Yatsawk
1993/1/7 Aungban - Pinlong
1993/3/27 Pinlong - Loikaw
1995/5/1 Namsang - Mone
1996/6/4 Banyin - Pharmon
1996/7/27 Taunggyi - Pharmon
1997/12/24 Taunggyi - Shwenyaung
2001/4/30 Banyin - Saikkaung
2002/7/31 Namsan - Mongseik
2003/3/27 Saikkaung - Pyinthaya
2004/3/20 Mongseik - Kaungsaing
2004/3/21 Pyinthaya - Thiyi
2004/11/27 Thiyi - Ponchaung
2006/1/1 Ponchaung - Kaungsaing
2008/11/30 Pyawbwe - Payangasu
2010/12/19 Kyaingtone - Wunkaung

3.列車
※ヤンゴンーマンダレー線の長距離列車は別ページに掲載します。
※この他にも、貨物列車や業務列車が多数運行されています。

・2022年現在運行再開が報じられている列車
Thazi - Shwenyaung1往復
153UP Taunggyi - Ban Yin 
154DN Ban Yin - Taunggyi

・2020年3月まで運行されていた列車
9UP/141UP Yangon - Thazi - Shwenyaung 客車列車(2014年頃まではピョーブェからの短絡線経由)
142DN/10DN Shwenyaung - Thazi - Yangon 客車列車(2014年頃まではピョーブェへの短絡線経由)
143UP Thazi - Yatsawk 客車列車
144DN Yatsawk - Thazi 客車列車
153UP Taunggyi - Saikaung 客車列車(以前はThiyiまで運行)
154DN Saikaung - Taunggyi 客車列車(以前はThiyi始発)

21UP Toungoo - Thazi RBE列車(隔日運行、2019年9月30日までは混合列車)
22DN Thazi - Toungoo RBE列車(隔日運行、2019年9月30日までは混合列車)
23UP  Thazi - Myohaung 混合列車
24DN Myohaung - Thazi 混合列車
511UP Pyawbwe - Thazi RBE列車
512DN Thazi - Pyawbwe RBE列車

111UP Thazi - Mingyan 客車列車、TZI担当
112DN Mingyan - Thazi 客車列車

・現在は運行されていない列車
27UP Pyinmana - Myingyan RBE列車(RBE3600形で2000年代後半に運行)
28DN Myingyan - Pyinmana RBE列車(RBE3600形で2000年代後半に運行)

113UP Thazi - Myingyan 客車列車(運休時期不明)
114DN Myingyan - Thazi 客車列車 (運休時期不明)

147UP Thazi - Loikaw 客車列車(2016年頃まではピンマナ始発、2019年頃より運休)
148DN Loikaw - Thazi 客車列車(2016年頃まではピンマナ終着、2019年頃より運休
149UP Aungban - Pinlong 客車列車(運休時期不明)
150DN Pinlong - Aungban 客車列車(運休時期不明)
15
1UP Namsan - Mone 客車列車(2016/4/17より運休)
15
2DN Mone - Namsan 客車列車(2016/4/17より運休)
155UP Taunggyi - Namsan 客車列車(運休時期不明)
156DN Namsan - Taunggyi 客車列車(運休時期不明)

4.施設・沿線風景

Thazi - Shwenyaung

 

 

夜のターズィ駅。画像はホームの端の方だが、四方向に列車が発着するため、夜なべをして列車を待つ人も多い。

Yebu駅。簡素な造りの駅舎だ。

峠区間では、複数のスイッチバックを走破する。
画像は画面前方へ推進運転をしている業務列車を写したもの。

スイッチバック区間の車窓。

何本もの列車が往復するためか、山間部であっても売店などが集まる駅も見られる。

カロー駅にて。ターズィからの列車との交換待ちに撮影。
標高を記載した駅名票も見られる。
カローから東は、高原地帯を進む。車窓には田畑が広がっている。
平野部との植生の違いを愉しもう。
アウンバン駅舎。
急カーブ区間も多い。

Taunggyi

タウンジー駅舎。タウンジー市内中心部からは離れた地区に位置している。
駅舎内部ではバドミントン等のスポーツができるようになっており、体育館のような雰囲気だった。
出発前の153UP編成。パオ族の衣装を着た女性たちが多く乗車していた。

<参考資料>
・ミャンマー国鉄旧公式サイト(路線開業日一覧)
・『鉄道百年史』(ビルマ語文献)


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